現場力インタビューVol.17「子どもの見る目を養う」
“個々の成長の手立てをもっと細かく具体的に”
現場力作成者:明日葉保育園 青葉台園 椎名 華恵 園長
椎名園長(写真左)と主任の平井先生
ソシオークグループの「現場力」とは
「現場力」とは、フードサービスや子育て支援、運行管理・移動サービスなど現場ではたらくソシオークグループの社員が自ら課題や改善点を見つけ、知恵と工夫によりチームで改善を重ねていく取り組みです。自ら考え実践するナレッジワーカーとしての誇りの醸成や、個人の持続的成長につながるとともに、各現場の意欲向上や組織の活性化にもつながっています。
明日葉保育園 青葉台園では、子どもの発達に応じた遊びを見える化し、日々の保育計画として活用しています。今回の現場力では、この計画表を参照し、発達に応じて活用できるおもちゃの写真をアルバムにまとめました。
「子どもたちは大きくなりたい気持ちで溢れています。一人一人の可能性をどうやって引き出せるか、私たちは一歩先の保育を目指していきたいです。」と語る椎名園長に、青葉台園の現場力についてお話を伺いました。
――今回の現場力が誕生した経緯を教えてください。
園内研修の際に、子どもの発達理解と保育士のスキルアップのためには何が必要か、みんなで考えました。まずは基礎として、保育士が月齢に応じた子どもの発達段階を理解すること、そして子ども一人一人の発達に応じた遊びを用意し、成長につなげていくことが重要だよね、という話になり、それを見える化するために計画表を作成しました。計画表は、全身運動と手指の発達、それに応じた遊びを記載しています。
月齢による発達段階の基準が分かっていれば、その子の意欲、興味、関心に合わせて対応できますよね。こちらの手立てにより、もっともっと可能性が広がる子もたくさんいるので、少し先の発達段階の遊びをイメージし、子どもが選び取れる環境設定をすることで、子どもたちの成長の幅を広げてあげることができます。
ただ、これまで活用してきた計画表には、「手指を使った遊び:ひも通し」というように、簡単な単語でしか載せていませんでした。「ひも通し」だけでも、発達段階に応じた色々な種類のおもちゃや遊び方があります。それを一覧で見られるように、おもちゃ一つ一つを撮影して写真に残し、アルバムのような形でファイルにまとめました。
――子どもたちに向けてどのようにファイルを活用しているのでしょうか?
ファイルは、年齢別のクラスと遊びの種類ごとにページを分けて、おもちゃの写真を整理しています。例えば「ひも通し」のページには、ひもの太さやひもを通す穴の大きさが違うさまざまなおもちゃを載せています。
保育士がファイルを見ながら「今この子はここまでできたから、次はこのおもちゃに興味が持てるかな」というように考え、その子の発達に合った遊びを用意し、ちょっと頑張ってみたらできた!という達成感にもつながるような見守りもしています。
保育士が発達に合わせて手作りしたおもちゃで、たくさん遊んで壊れてしまったものもありますが、それも写真に残しておきます。ファイルを見直した時に、「前にこんなおもちゃもあったよね」と思い出し、次に作るときのヒントにもなります。
――普段、青葉台園ではどのように現場力に取り組んでいますか?
青葉台園は、社員全員で現場力に取り組もうという積極性があって、パートナーさんも1人1枚現場力レポートを提出してくれています。
今回の現場力レポートのタイトルにも入れた「子どもの見る目を養う」というのは、昨年の明日葉保育園全園の保育のテーマでした。青葉台園は現場力に関しても、そのテーマを基に“子ども理解”という視点から考えるようにしました。今回のおもちゃの写真をまとめた現場力も、その1つです。
また、現場力レポートを提出して終わりではなく継続できるようにすることは、現状の課題でもあります。そのために過去の現場力レポートも全てファイルにまとめ、いつでも見られるようにしています。
昨年、遠藤賞を受賞した「ナッジに基づいて考えてみよう!~歩きたくなる廊下~」の現場力(子どもたちが廊下を走らないように床にシールを貼る取り組み)についても、考案してくれた社員が異動した今でも、シールのテーマを変えて継続しています。今回の現場力も、発達に応じた遊びを見える化した現場力の続編です。
会議で子どもたちの発達についてアルバムを見ながら話し合う様子
――おもちゃの写真を一つ一つ撮影してアルバムにしたり、現場力レポートを過去のものまで全てまとめてファイルにしたり、日常の保育だけでも忙しい中で現場力にすごく手間がかかっていますよね。取り組むモチベーションは何でしょうか。
やはり、目の前にいる子どもを見ていると、今、この子の育ちに必要な環境は何だろう?と考え、こんな風に大きくなってくれたら嬉しいなあ、と願うとともに、こんな環境設定をしたらどんな反応をしてくれるかな?どんな遊びが広がっていくかな?と想像すると、ワクワクした気持ちになり、“やってみよう!”という実践につながります。社員同士の語り合いを大事にする中で、子ども一人一人が大きくなっていく喜びを共感できるんですよね。
今回の現場力のように、ツールを使って子どもたちの成長をより分かりやすく、見えるようにすることで、先生たちも遊びのイメージが広がり保育の引き出しが増えます。すると「保育が面白い、保育って楽しい!」と手ごたえを感じるようになるんですね。クラス会議でもみんなが「可愛い子どもたちの成長を手助けしたい。どうしたらいいんだろう?」とその子にとって一番良い方法は何か試行錯誤している。
そんな先生達の熱心な思いや、一生懸命な気持ちが伝わってくるので、一緒に学びたい!チームワークで実践したい!と夢中になって取り組める力が湧いてくるのです。
昨日もクラス会議で話し合った話題をもとに、すぐに「これ作ってみる?」と言って実行していました。スピーディーに。タイムリーに。子どもたちの発達は止まらないから。子どもにとって遊びは学び。そこに私たちもついていかなければならない。
「後手後手の保育ではなく、一歩先の保育」をしないと!そう思ったら自ずと現場力にも力が入ります。
- 2018年